永住許可に関するガイドラインについて
法務省人国管理局では、「永住許可に関するガイドライン」を公表し、入管法第22条(永住許可)において示されている素行善良要件、独立生計要件、国益適合要件について説明を行っています。このページでは、当ガイドラインについて見てみたいと思います。
なお、令和元年(2019年)5月31日に永住許可に関するガイドライン(改訂版)が発表されています。主な改訂箇所は下記のとおりです。
- 国益適合要件のなかの公的義務の履行について、納税に加え、具体的に公的年金及び公的年金及び公的医療保険の保険料の納付を適正に履行していることが明記されました。従って、今後は公的年金や健康保険の保険料を遅延なく完納してから永住申請をする必要があります。
- 出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務の適正な履行について記載されました。
- 就労資格の在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」については、永住申請における日本在留の年数にカウントされないことも明記されました。
- 配偶者ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等)からの永住申請については、配偶者ビザから永住権の申請の記事をご参照ください。
- 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務、技能、経営・管理等)からの永住申請については、就労ビザから永住権の申請の記事をご参照ください。
1 法律上の要件
(1)素行が善良であること(素行善良要件)
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
素行善良要件については、次の①~③のいずれにも該当しない者であることについて審査が行われます。
①日本国の法令に違反して、懲役・禁固又は罰金に処せられたことがある者。ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者又は執行猶予の言渡しを受けた場合で、当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後さらに5年を経過したときは、これを該当しないものとして扱われます。
刑の消滅(刑法第34条の2)
- 禁固以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しを効力を失う。罰金以下の刑の執行の終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。
- 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
②少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号又は第3号)が継続中の者
③日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者
道交法等の軽微な法違反であっても繰り返し行う者はこれに該当します。その他には、飲酒運転、無免許運転等、窃盗等の前歴が複数ある者、資格外活動許可の制限を超過して労働をした者も該当する可能性があります。
(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
※ ただし、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、(1)及び(2)に適合することを要しない。また、難民の認定を受けている者の場合には、(2)に適合することを要しない。
生活保護を受給しておらず、かつ、現在及び将来においていわゆる「自活」をすることが可能と認められる必要があります。なお、独立生計要件は、必ずしも申請人自身が具備している必要はなく、申請人が配偶者等と共に構成する世帯単位でみた場合に安定した生活を続けることができると認められる場合には、これに適合するものとして扱われます。
日本人の配偶者からの永住許可申請を行う場合は独立生計要件が課されないので、生活保護を受けていても、それを理由として不許可になることは原則ないと考えます。ただし、後述の国益適合要件を満たす必要があります。
定住者からの永住申請においては、生活保護を受給していれば独立生計要件を満たさないと判断される可能性が高いです。
就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」や「技能」等)からの永住申請については、最低年収300万円以上必要かと考えられます。ただし、扶養家族の人数(本国も含む)が増えると、求められる年収額も増えます。
「経営・管理」の在留資格からの永住許可申請は、経営する会社の事業の安定性・継続性についても審査の対象になると考えられます。
(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税,公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。(本ガイドラインについては、当面、在留期間「3年」を有する場合は、(3)ウの「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱うこととする。)
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
「留学」の在留資格から就労資格又は居住資格への在留資格の変更許可を受けて在留する者については、この10年以上在留している期間のうち就労資格又は居住資格をもって継続して5年以上在留していることを要します。
就労資格とは、入管法別表1の1又は2のいずれかに該当し、かつ実際に収入や報酬を受けていたことを要します。居住資格とは、入管法別表2の在留資格、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」を指します。
就労資格のうち、在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」については、永住申請における日本在留の年数にカウントされません。
「引き続き」とは、在留期間が途切れることなく在留を継続することを表します。再入国許可を得ずに出国したり、出国中に再入国許可が失効すると在留資格が消滅します。その場合は在留を継続することにはなりません。
再入国許可を得て、在留期間の半分以上を出張などにより海外で勤務する場合は、生活の本拠が日本にないとされ、永住許可されない可能性があります。
「就労資格又は居住資格をもって継続して5年以上」については、例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格にて直近の5年以上の在留を継続していることを意味します。
在留期間の満了日が近い場合は、在留期間更新許可申請をします。在留期間更新と永住許可申請は別個の申請になります。
納税義務等の公的義務の履行については、納税に未納があれば同義務を履行しているとは認められません。また、健康保険料の不払い・未納があることが判明した場合は、不許可になります。年金については、2019年5月31日に発表された永住許可ガイドラインの改訂版において、公的年金の保険料の納付について明記されましたので、未納が無いことは当然として、遅れずに納付することも審査されます。申請人が被扶養者である場合には、扶養者が公的義務を履行しているなど法令を遵守していることが求められます。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律6条に規定する感染症の罹患者、又は麻薬等の慢性中毒者等は、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがある者として取り扱われます。
著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められることが必要です。これは、素行善良要件の内容と重複します。ガイドラインにおいても、罰金刑や懲役刑を受けていないことが挙げられています。
2 原則10年在留に関する特例
(1)日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること
日本人の配偶者や永住者・特別永住者の配偶者の場合は、原則10年の日本在留は求められず、実体を伴った婚姻生活が3年継続し、かつ引き続き1年以上日本に在留していれば、在留実績は足ります。
(2)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること
「定住者」の在留資格を付与された後、5年以上継続して日本に在留していれば在留実績は足ります。また、「日本人の配偶者等」の在留資格を有していた外国人が離婚や日本実子養育等のため告示外定住として「定住者」に在留資格を変更した場合は、「日本人の配偶者等」の在留資格での在留とあわせて5年以上あれば、在留実績は足ります。
(3)難民の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して本邦に在留していること
(4)外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で5年以上本邦に在留していること
※「我が国への貢献」に関するガイドラインを参照して下さい。(法務省ホームページ)
(5)地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号のいずれかに該当する活動を行い、当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合、3年以上継続して本邦に在留していること
(6)出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ 3年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令
に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。※ 上記アの「高度人材外国人」とは、ポイント計算の結果70点以上の点数を有すると認められて在留している者が該当します。
(7)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令
に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。※ 上記(7)アの「高度人材外国人」とは,ポイント計算の結果80点以上の点数を有すると認められて在留している者が該当する。
入管法条文
永住許可
第22条 在留資格を変更しようとする外国人で永住者の在留資格への変更を希望するものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し永住許可を申請しなければならない。
2 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。
一 素行が善良であること。
二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。
3 法務大臣は、前項の許可をする場合には、入国審査官に、当該許可に係る外国人に対し在留カードを交付させるものとする。この場合において、その許可は、当該在留カードの交付のあつた時に、その効力を生ずる。