経営管理ビザと飲食店開業
外国人が日本で起業し、経営管理ビザを申請する一例として、外国料理店舗を新規で開業するケースを挙げてみます。「技能」の在留資格で日本で長年働き、資金を貯めて独立開業するケースや、留学生で大学卒業後、本国の親から借りたお金を原資として開業するケースなど当てはまるかと思います。なお、永住者、日本人の配偶者等などの身分系の在留資格をもつ外国人が飲食店を経営する場合は、経営管理ビザへの変更は不要です。
以下、レストラン等の飲食店開業から経営管理ビザ取得までのフローを示します。
フローチャート
食品衛生責任者の講習を受ける/店舗を探す
- 食品衛生責任者の資格は、飲食店営業許可申請の要件となり、飲食店を営む場合は取得が必須です。時間のある時に講習を受けておきます。講習は一日で終わりますが、講習会は非常に混むので、事前に予約をします⇒食品衛生責任者養成講習会
- 店舗を探します。契約をする場合は、会社設立後、会社名義への変更が無料でできるかどうか不動産屋さんに確認します。
会社設立-定款を認証する
出資の履行:500万円以上の出資金を発起人の銀行口座に送金する
- 定款認証後から登記申請までに発起人の個人口座に出資する金額を振り込みます
- 「経営管理」ビザの許可要件として500万円以上の資本金が必要になります
- 投資した金銭について、その原資が審査されます。会社設立における投資額をどのように調達したのか合理的な説明を行う必要があります(親族から借りたなど)
- 親族から借りた場合は金銭消費貸借契約書や送金記録、親族との関係を証明する公的文書などの証拠を求められる場合があり、給料などでお金を貯めた場合には預金通帳によって資金形成の過程を立証していきます。
会社設立登記
- 登記は会社の本店所在地を管轄する法務局で行います。
- 法務局に登記申請をしてから登記完了まで約1週間かかります。
- 会社設立にかかる全体的な時間は2~4週間です。
- 登記申請は司法書士の先生にお願いしています。
税務署への届け出
- 法人を設立してから2か月以内に本店所在地を管轄する税務署に法人設立届出書等の届出が必要です。
- 税務署への届出書の控えは経営管理ビザの申請の添付書類になります
店舗の不動産契約をする
- 店舗の場所は事前に決めておきます。店舗の契約を会社設立前に行う場合は、会社設立後に会社名義への書き換えが必要になります。
- 居抜き物件は初期投資の節約になり営業許可が下りやすいです
- 事業所(店舗)の確保が経営管理ビザの要件になっています
- 飲食店の場合は店舗物件の契約が必要であり、内装を整え、看板やテーブル等設置し、営業許可を得た上で経営管理の在留資格申請をします
- 友人等から外国料理店を譲渡された場合も、会社名義で店舗物件の契約が必要です
- 店舗の賃貸借契約後、賃料=ランニングコストが発生します。店舗の内装、営業許可申請、経営管理ビザの申請など手際よく手続きを進めていきましょう。
飲食店営業許可を申請する
- 「経営管理」の在留資格申請の際には営業許可を取得しておく必要があります。営業許可がないと経営管理ビザは下りません。※飲食店営業許可申請には食品衛生責任者の資格が必要です。
- 保健所に飲食店営業許可を申請します。申請してから許可証交付まで14日程度かかります。飲食店営業許可申請については、下記を参照してください。
- 日本において適法に行われる業務であれば、飲食店、不動産業、中古車販売等にかかわらず制限はありません
経営管理ビザを申請する
- 審査期間は1か月から3か月です。繁忙期はこれ以上かかることもあります。
- 許可が下りる前の事業経営は資格外活動となり、不法就労に該当します。(日本人や永住者等が一時的に共同経営者となる場合は事業経営はできます。申請人は経営管理ビザ取得前は経営活動はできません。)
- 「経営管理」の在留資格は経営者が経営をするためのビザであり、調理師やホールを専門に行うビザではありません。そのため、調理師やホールスタッフの人員確保が必要になります。事業計画書において、調理師やホールスタッフの確保ができていることを説明することが必要です。
- 経営者の職務とは、事業の運営に関する重要事項の決定、業務の執行、監査の業務等に従事する代表取締役、取締役、監査役等の役員としての活動が該当します
- 申請人が経営に実質的に参画し又は従事するものでなければなりません
- 「経営管理」の在留資格を持って、主たる活動として事業を経営しつつ、従たる活動として調理やホール等の現業業務を行うことは可能です
- 「技能」の在留資格で調理業務に長年従事してきた外国人コックが、独立し自ら店舗を持ち経営する場合には、「技能」から「経営管理」の在留資格に変更する必要があります。
飲食店営業許可申請
飲食店営業と喫茶店営業
飲食店営業
一般食堂、料理店、すし店、蕎麦屋、旅館、仕出屋、弁当屋、レストラン、カフェ、カフェ、バー、キャバレーその他食品を調理し、又は設備を設け、客に飲食させる営業
喫茶店営業
喫茶店、サロンなど酒類以外の飲み物又は茶菓を客に飲食させる営業。喫茶店営業では、アルコール類を提供できず、クッキーやビスケットなどのみの提供に限定されます。調理が必要な飲食を提供する場合には、飲食店の営業許可が必要になります。
※午前0時から午前6時までに営業する酒類提供を伴った飲食店の場合には、飲食店営業許可申請と深夜酒類提供飲食店営業届出申請を行う必要があります。
飲食店営業許可申請
営業許可申請の流れ
開業計画⇒保健所への事前相談⇒書類の作成⇒許可申請⇒施設検査⇒許可証の交付(申請してから交付まで14日程度)
- 施設工事着工前に、設計図を持参して所管の保健所に事前相談に行きます。
- 書類の作成後、手数料とともに申請書と添付資料を提出し、書類審査を受けます。
- 現場で施設検査を受けます
- 所管の保健所で、営業許可証が交付され、営業の開始ができます。
提出書類
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要
- 営業設備の設置図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの
- 法人登記事項証明書(申請者が法人の場合)
- 水質検査成績書(貯水槽を使用する場合で1年以内のもの。水道水を使用する場合は不要)
食品衛生責任者とは
食品衛生責任者とは、営業施設で衛生管理を行う者のことで、施設と食品の衛生管理、従業員の衛生面での教育を担う立場にある者のことをいいます。飲食店を営業する際には必ず食品衛生責任者を置かなければなりません。
【食品衛生責任者になる方法】
- ①調理師や栄養士などの資格を有する者の就任、又は②食品衛生講習会の受講済の者の就任の2通りあります。通常は②の食品衛生講習会を受講します。
- 東京都の場合は、知事の指定を受けた「一般社団法人東京都食品衛生協会」が食品衛生者養成講習会を月に10回程度開催しています。受講時間は6時間です。
食品関係営業施設の基準
飲食店や喫茶店営業における施設の基準は各都道府県の条例で定められています。東京都の場合は、食品衛生法施行条例で定められています
営業許可を受けるためには、施設基準を満たす必要があります。施設基準には、共通基準と特定基準の2種類があります。
- 共通基準
自動販売機以外のすべての業種に必要な施設の基準です。 - 特定基準
業種ごとに定められています。
共通基準
【営業施設の構造についての基準】
場所:清潔な場所に位置していること
建物:鉄筋、鉄筋コンクリート、石材、木造モルタル、木造作り等
区画:それぞれの使用目的に応じて、施設を壁、板などで区画する
床:タイル、コンクリートなど耐久性があり、排水がよく清掃しやすい構造であること
内壁:床から1メートルまでは耐久性材料又は厚板で腰張りし、清掃しやすい構造であること
天井:清掃しやすい構造
明るさ:50ルクス以上
換気:施設にばい煙、蒸気などの排除設備を設置する
周囲の構造:周囲の地面は、耐久性材料を使って舗装し、排水がよく、清掃しやすいこと
防除設備:ねずみや虫などの防除設備を設置する
洗浄設備:原材料、食品、器具、容器類を洗浄するのに便利かつ十分な大きさの流水式の洗浄設備と従業者専用の流水受槽式手洗い設備の手指の消毒装置の設置
更衣室:作業場の外に清潔な更衣室又は更衣箱を設置する
【食品取扱設備についての基準】
器具等の整備:取扱量に応じた数の機械器具と容器包装を備える
器具等の配置:作業に便利で清掃と洗浄がしやすい位置に配置すること
保管設備:原材料、食品、添加物、容器包装を衛生的に保管できる設備を設ける
器具等の材質:食品に直接接触する機械器具等は、耐久性で洗浄しやすく、熱湯、蒸気、殺菌剤などで消毒できるもの
運搬具:必要に応じて、防虫、防じん、保冷装置のある清潔な食品運搬具を備える
計器類:冷蔵、殺菌、加熱、圧搾などの設備には、見やすい箇所に温度計と圧力計を設置する。必要に応じ計量器も備える
【給水及び汚物処理】
給水設備:水道水又は公的に飲料に適していると認められた水を豊富に供給することができるもの。ただし、島しょなどで、飲料に適した水が土地その他の事情により得られない場合は、ろ過や殺菌などの設備を設ける
トイレ:作業場に影響のない位置・構造にして、従業者の数に応じた数を設ける。ねずみや虫の侵入を防止する設備を設ける
汚物処理設備:耐久性があり、十分な容量のある清掃しやすいもの。また、ふたつきで、汚臭、汚液の漏れないもの
清掃機器の格納設備:作業場専用の清掃器具と格納設備を設ける
特定基準
飲食店営業
冷蔵設備:食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること
洗浄設備:洗浄槽は、2槽以上とすること。ただし、自動洗浄設備のある場合又は食品の販売に付随するものであって、当該食品の販売に係る販売所の施設内の一画に調理場の区画を設け、簡易な調理を行う場合で衛生上支障ないと認められるときは、この限りでない。
給湯設備:洗浄及び消毒のための給湯設備を設けること。
客席:客室及び客席には、換気設備を設けること。客室及び客席の明るさは、10ルクス以上とすること。また、食品の調理のみを行い、客に飲食させない営業については、客室及び客席を必要としない。なお、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律又は旅館業法の適用を受ける営業を除く。
客用便所:客の使用する便所があること。ただし、客に飲食させない営業については、客用便所を必要としない。なお、客の使用する便所は、調理場に影響のない位置及び構造とし、使用に便利なもので、ねずみ族、昆虫等の侵入を防止する設備を設けること。また、専用の流水受槽式手洗い設備があること。
喫茶店営業
冷蔵設備:食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること。
客席:客室及び客席には、換気設備を設けること。客室及び客席の明るさは、10ルクス以上とすること。また、食品の調理のみを行い、客に飲食させない営業については、客室及び客席を必要としない。なお、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律又は旅館業法の適用を受ける営業を除く。
客用便所:客の使用する便所があること。ただし、客に飲食させない営業については、客用便所を必要としない。なお、客の使用する便所は、調理場に影響のない位置及び構造とし、使用に便利なもので、ねずみ族、昆虫等の侵入を防止する設備を設けること。また、専用の流水受槽式手洗い設備があること。
更新日:2019年1月26日