嫡出の推定
- 日本の法律では、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定されます。また、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は離婚後300日以内に生まれた子も婚姻中に懐胎したものと推定されます(民法第772条)。
- 例えば、日本人夫と外国人妻(例えば、妊娠4か月)が離婚を考えており、妻が帰国し母国で出産をするケースを想定してみます。その場合、離婚後300日以内に生まれた子どもは日本人夫の嫡出子として、在外日本大使館・領事館に出生の届出ができます。夫が日本人のため、子どもは日本国籍を取得します。また、外国人妻の本国法が父母両系血統主義に属する場合には、当然に母親の国籍を取得します。その子は出生後、3か月以内であれば、在外公館に出生届と共に日本国籍の留保届出をすれば、日本国籍も保有できます。その場合、二重国籍となるため、その子が22歳に達するまでに国籍選択を行います。
嫡出否認の申立て(推定を受ける嫡出子)
- 婚姻の成立から200日経過した後、または婚姻の解消(離婚)若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は夫の子と推定されます。(民法第772条)
- この推定は非常に強力であり、嫡出子と推定される子が現在の母の夫が実父でないものとして争うには、嫡出否定の訴えによらなければなりません。提訴できる者は夫だけであり、提訴期間は夫が子の出生を知った時から1年以内です。
- ここで、日本人夫と外国人妻について夫婦関係が悪くなり、別居の末、外国人妻が夫以外の日本人との間に子どもを妊娠してしまったケースを想定してみます。日本の法律では婚姻中・離婚後300日以内に生まれた子は、出生届を出した場合は夫の嫡出子としての推定を受けるため、夫の嫡出子として戸籍に記載されます。
- このケースの場合、夫は自分の子ではない旨の訴えを、その事実を知った日から1年以内に家庭裁判所に提起しなければなりません。夫が自ら家庭裁判所に嫡出否認の申立てを行い、調停後審判が確定すれば、嫡出子の記載が戸籍から抹消されます。
親子関係不存在確認の訴え
- 夫から協力が得られない場合には、夫とは事実上離婚状態にあり夫の子どもではない事実を根拠に、妻のほうから「親子関係不存在確認」の申立てを家庭裁判所に提起します。出訴期間の制限はありません。
- 夫婦間の子ではないことが明らかな場合には「推定の及ばない子」とされ、また婚姻後200日以内に生まれた場合には「推定されない嫡出子」とされます。親子関係不存在確認の訴えが認められるためには、夫婦間の子ではないことが明らかな状況を証明しなければなりません。
- 親子関係不存在確認は、調停前置主義をとっており、まず調停を申し立てる必要があります。夫が親子関係不存在確認に同意している場合は、DNA鑑定を行った上で、子の懐胎時期に夫婦が別居していることを理由に、合意に相当する審判をしてもらいます。
離婚後300日以内に生まれた子の出生届
- 離婚後300日以内に生まれた子は、夫の嫡出子と推定され、夫の戸籍に入籍します。
- しかし、その出生が離婚後であれば、出生届に医師の「懐胎時期に関する証明書」を添付することにより、非嫡出子又は後婚の夫を父とする嫡出子としての出生届が受理され、子の身分事項欄には出生事項とともに「民法第772条の推定が及ばない」旨が記載されます。その結果、婚姻中の夫との関係を否定する手続きを執ることなく、実父との父子関係が戸籍上記載されます。