退去強制と在留特別許可
- 入管法において、退去強制事由に該当する在留外国人について、日本から退去強制させることが可能と定められています。
- 入管法24条において、退去強制事由を列挙し、該当する外国人については、退去強制手続により国外退去させられます。
- 退去強制により帰国した場合は、日本への入国拒否期間が5年間(リピーターは10年間)となります。
- 日本人や永住者と結婚が成立し正当な夫婦であれば、在留特別許可が認められる可能性があります。
退去強制事由に該当するケース
- 不法入国者
- 不法上陸者
- 偽造・変造文書を作成提供した者
- 資格外活動者
- 不法残留者(オーバーステイ)
- 刑罰法令の違反者
- 売春関係業務の従事者
- 不法入国や不法上陸を幇助した者
不法滞在者に対する刑罰について
入管法では、不法滞在者に対して、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金が科せられると規定されています。
また、不法滞在者には、行政処分として退去強制の対象になります。入管法違反者に対する罰則・行政処分の規定は非常に重いです。
退去強制手続きの流れと在留特別許可
退去強制手続きは下記の4段階において行われます。
第1段階 入国警備官による違反調査
入国警備官は「収容令書」により外国人容疑者を収容し、48時間以内に入国審査官に身柄を引き渡します。
第2段階 入国審査官による審査
入国審査官の審査の結果、退去強制事由に該当すると認定され、容疑者がこの認定に服すると、「退去強制令書」が発付されます。当該認定に対して不服がある場合は、容疑者は3日以内に、特別審理官に対し、口頭審理の請求ができます。
第3段階 特別審理官による口頭審理
特別審理官の判定に誤りがなく、退去強制事由に該当すると判定された場合、容疑者がこの判定に服すると「退去強制令書」が発付されます。特別審理官の判定に異議がある場合には、3日以内に、法務大臣に対し、異議を申し出ることができます。
第4段階 法務大臣の裁決
法務大臣が、異議の申出に理由がない(退去強制事由に該当する)と裁決すると、「退去強制令書」が発付されます。しかしながら、法務大臣が、異議申出に対する裁決にあたり、異議申出に理由がない(退去強制事由に該当する)とした場合でも、その外国人の日本での生活歴、家族状況等の状況を考慮し、法務大臣が特に在留を許可すべき事情があると認めるときには、その外国人を特別に許可することができるとされており、一般に在留特別許可(法務大臣の裁決の特例)と呼ばれています。
在留特別許可(法務大臣の裁決の特例)
法務大臣は、異議の申出に理由がない(容疑者が退去強制事由に該当する)と認める場合でも、その容疑者が下記に該当する場合には、その者を日本への在留を特別に許可(在留特別許可)することができるとされています。
①永住許可を受けているとき
②かつて日本国民として日本に本籍を有していたことがあるとき
③人身取引等により他人の支配下に置かれて日本に在留するものであるとき
④その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき
- 在留特別許可は、法務大臣の自由裁量により許否されるものであり、違反の様態、家族関係、生活状況、国際関係、国内事情などの日本社会に及ぼす影響を含め総合的に判断されます。
- それらを理由として、在留特別許可の基準は設けられていませんが、「在留特別許可に係るガイドライン」によって、在留特別許可に係る基本的な考え方および許否判断に係る考慮事項と在留特別許可の許否判断が公表されています。
在留特別許可に係るガイドラインの中で示された主な積極要素
●外国人が、日本人の子または特別永住者の子であること
●外国人が日本人または特別永住者との間に出生した実子(嫡出子または非嫡出子)を扶養している場合であって、次のいずれにも該当する場合
- 実子が未成年で未婚であること
- 外国人が当該実子の親権を有していること
- 外国人が当該実子を日本で相当期間同居の上、監護および養育をしていること
●外国人が、日本人または特別永住者と婚姻が法的に成立している場合であって、次のいずれにも該当すること
- 夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力し扶助していること
- 夫婦の間に子供がいるなど、婚姻が安定かつ成熟していること
●外国人が、日本の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く)に在学し、相当期間本邦に在住している実子と同居し、当該実子を監護および養育していること
●難病等により日本での治療を必要とすること
●その他の積極要素
- 自ら入国管理局に出頭したこと
- 外国人が永住者・定住者と婚姻が法的に成立して場合で、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に扶助していること、および夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ熟成していること
- 外国人が実子(永住者・定住者)を扶養している場合で、当該実子が未成年かつ未婚であり、当該外国人が当該実子の親権を現に有しており、当該実子を日本において相当期間同居の上、監護および養育していること
- 外国人が、日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者・永住者の在留資格で在留している者の扶養を受けている未成年・未婚の実子であること
- 外国人が、日本での滞在期間が長期間に及び、日本への定着性が認められること
- その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること
- なお、在留特別許可の許可・不許可事例も公表されていますので参考にしてください。
- 在留特別許可を受けた外国人は、在留資格、在留期間を決定され、中長期在留者になる場合には在留カードが交付されます。
身柄の収容と仮放免
- 上記第1段階の入国警備官の違反調査において、主任審査官が発付する「収容令書」によって容疑者を入国管理局署内の収容場等に収容できますが、収容できる期間は30日以内とされ、やむを得ない事由があると認められるときに最大30日の延長(通算60日以内)ができます。
- 退去強制が確定すると、主任審査官は退去強制令書を発付します。その後、入国警備官は退去強制令書の発付を受けた外国人を入国者収容場等に収容し、国外に退去強制します。
- 収容令書や退去強制令書により身柄を収容されている外国人は、入国者収容所長または主任審査官より、仮放免を受けることができます。仮放免の許可に当たっては、保証金の納付、住居および行動範囲の制限、呼び出しに対する出頭するなどの条件が付されます。
再審情願
在留特別許可が認められず、退去強制令書が発付された場合において、法務大臣の裁決の後に下記の事由が生じた場合、退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起する以外に、「再審情願」を願い出る方法があります。
・法務大臣の裁決の時点までに書類が揃わなかったり、女性の待婚期間が経過しておらず、婚姻手続き完了していなかったが、裁決の後に、日本人、特別永住者、永住者、定住者との間に婚姻が成立した場合
・法務大臣の裁決の際に日本人配偶者、特別永住者等との間で婚姻は成立していたが、在留特別許可が認められず、その後夫婦の間に子どもが生まれた
・その他
※再審情願が認められる可能性は非常に低いです。
当事務所によるサポート
在留特別許可については、他の在留資格申請と異なり、申請取次行政書士による申請代行はできず、お客様ご本人が直接入管に出頭しなければなりません。
従いまして、当事務所では、お客様との面談のうえ陳述書などの書類の作成や国際結婚手続きのサポート等を承り、お客様と入管への出頭の同行をいたします。
行政書士法により行政書士に守秘義務が課せられております。入管や警察には連絡しませんので、安心してご相談ください。
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